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『僕の彼女−4』

[650] 紫の焔 2014-03-11投稿
先に百合子が飲んでいたので自分のグラスにもビールを注ごうとして、固まってしまった。彼女を見つめる。
「傷付く事を、また仰るね?」
「だって、携帯小説って、いわゆるライトノベルみたいなもんでしょ?内容は別にして簡単な文体に、どちらかというと、心理描写がメインじゃない?軽い文体と言ってもいいかしら?あなたのは、重いし状況描写が多くて、携帯小説じゃないわよ」
彼女は自分のグラスのビールを一気に飲み干した。大きく息を吐く。チラッと僕を見て様子を伺う。
僕は彼女の空いたグラスにビールを注いだ。
「と言う事は、俺の文体って、ガチ小説に向いてるって事か!」
僕は明るく笑った。軽くガッツポーズも取る。
「そのおバカなポジティブシンキングはどうしたら出来るの!?」
彼女はそう呆れながらも吹き出した。僕も声をあげて笑う。
彼女の言葉が、僕が言った意味では無いのは百も知ってる。かと言って怒りの感情が湧く事もない。
もっと若ければ喧嘩になったかも知れないが、今はならない。歳を重ね、そうそう怒りに震える事が少なくなったのはあるかもだが、それ以上に、彼女だけでなく、他人に対しての意識が変わったのだ。
自分が生きてきた人生。だがそれは決して他人と同じでなく、自分の物差しは他人には当てはまらない。
僕が感じるように彼女、もしくは他人が感じるかと言えば、答えは否。もちろん、同じように感じる事柄もあるが、それが本当に全く寸分の狂いもなく同じかと言えば、それも同じとは言えない。
太陽を日本で色で表せば、大抵の人が赤と言う。だがメキシコだと大抵の人が黄色だと言う。
国も違い文化も大きく違うから。
果たしてそうだろうか。
もっと小さく地域を絞っても、育つ環境が違えば物事に対する意識も違う。
どちらが正解ではなく、この世はどちらも共存しているのだ。そしてどちらも正しく、どちらも間違いとなるのだ、立場により心情により。
自分とは違う親がいて友達がいて環境があって、自分とは違う意見や主張があるのは、しごく当然だ。
それに対して怒りの感情だけに囚われてしまうのは、ひどく傲慢だ。

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