流狼-時の彷徨い人-No.78
戦略、戦術に秀でた者は幾通りもの展開を想定し、相手の動きに対応するものである。
加藤段蔵もその一人ではあったが、半次郎の奇想天外な言動は彼の予測を越えていた。
だが、その状況ですら面白いと思えるだけの余裕が、段蔵にはあった。
「俺を越えて見せるとは随分な大口をたたくじゃねぇか。
それで、その代価として何を要求する気だ?
あの女との闘いをやめさせたいなら、要求する相手が違うぜ」
将来的な楽しみが確約されるならば、ノアとの戦闘は先伸ばししてもいいと段蔵は考えていた。
だがその場合、問題なのは段蔵をハク側の存在と判断したノアであった。
一方的にノアから攻撃されれば、いかに段蔵でも防ぎきれるものではない。
段蔵が取り引きに興味をしめしたことで、目的の第一段階を果たした半次郎。
ここから先の交渉こそが重要であり、最大の難事であることを知る彼は、水晶眼をこらして言葉をはっした。
「私からの要求はただ一つ、ノア殿がハクと闘う際、彼女の助勢を加藤殿にお願いしたい」
成り行きを静観していたノアは、半次郎の交渉を荒唐無稽なものとしてとらえていた。
ハクに与するはずの段蔵がそれに応じるはずがなく、彼女は半次郎の真意を計りかねていた。
一方、条件を掲示された段蔵は、その表情を一変させていた。
「…俺にあの男と闘えっていうのか?
冗談じゃねぇ、あんな化け物とやりあうなんて真っ平御免だね」
予測通りハクと闘うことを拒絶した段蔵。
しかし、その段蔵がハクを化け物と評したことで、ノアの内心は穏やかではなくなっていた。
ノアの戦闘能力が段蔵と伯仲している以上、彼の言葉が額面通りであるならば、彼女にはハクに対抗する手立てが無いことになる。
だが、彼女は気づいていない。
段蔵が口にした言葉に、矛盾が存在することを。
ノアが見落とした段蔵の小さな綻びに気づいた半次郎は、その瞳に憐憫の情を忍ばせていた。
「強い敵を探し求めているはずの貴方が、何故強すぎる事を理由に闘いを拒否するのですか?
貴方がハクの手の者ならば、それを理由に断ればいいだけのはず。
それをせずに闘いを拒んだということは、貴方はハクに与してはいないが口にはしたくないハクとの確執があるのではないですか?」
不快感をあらわにした段蔵は、舌打ちとともにその姿を消した。
即応して頭上を見上げる半次郎。
その視線の先、七間(約12.74米) の高さの樹の枝に段蔵はいた。
「御託は耳障りなだけだ。
俺を越えて見せるというなら、先ずはこいつをかわしてみせろ。
話はそれからだ」
段蔵の周りに、金色の球体が無数に輝き始めた。
加藤段蔵もその一人ではあったが、半次郎の奇想天外な言動は彼の予測を越えていた。
だが、その状況ですら面白いと思えるだけの余裕が、段蔵にはあった。
「俺を越えて見せるとは随分な大口をたたくじゃねぇか。
それで、その代価として何を要求する気だ?
あの女との闘いをやめさせたいなら、要求する相手が違うぜ」
将来的な楽しみが確約されるならば、ノアとの戦闘は先伸ばししてもいいと段蔵は考えていた。
だがその場合、問題なのは段蔵をハク側の存在と判断したノアであった。
一方的にノアから攻撃されれば、いかに段蔵でも防ぎきれるものではない。
段蔵が取り引きに興味をしめしたことで、目的の第一段階を果たした半次郎。
ここから先の交渉こそが重要であり、最大の難事であることを知る彼は、水晶眼をこらして言葉をはっした。
「私からの要求はただ一つ、ノア殿がハクと闘う際、彼女の助勢を加藤殿にお願いしたい」
成り行きを静観していたノアは、半次郎の交渉を荒唐無稽なものとしてとらえていた。
ハクに与するはずの段蔵がそれに応じるはずがなく、彼女は半次郎の真意を計りかねていた。
一方、条件を掲示された段蔵は、その表情を一変させていた。
「…俺にあの男と闘えっていうのか?
冗談じゃねぇ、あんな化け物とやりあうなんて真っ平御免だね」
予測通りハクと闘うことを拒絶した段蔵。
しかし、その段蔵がハクを化け物と評したことで、ノアの内心は穏やかではなくなっていた。
ノアの戦闘能力が段蔵と伯仲している以上、彼の言葉が額面通りであるならば、彼女にはハクに対抗する手立てが無いことになる。
だが、彼女は気づいていない。
段蔵が口にした言葉に、矛盾が存在することを。
ノアが見落とした段蔵の小さな綻びに気づいた半次郎は、その瞳に憐憫の情を忍ばせていた。
「強い敵を探し求めているはずの貴方が、何故強すぎる事を理由に闘いを拒否するのですか?
貴方がハクの手の者ならば、それを理由に断ればいいだけのはず。
それをせずに闘いを拒んだということは、貴方はハクに与してはいないが口にはしたくないハクとの確執があるのではないですか?」
不快感をあらわにした段蔵は、舌打ちとともにその姿を消した。
即応して頭上を見上げる半次郎。
その視線の先、七間(約12.74米) の高さの樹の枝に段蔵はいた。
「御託は耳障りなだけだ。
俺を越えて見せるというなら、先ずはこいつをかわしてみせろ。
話はそれからだ」
段蔵の周りに、金色の球体が無数に輝き始めた。
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