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眠り姫

[1162] グルルル 2015-02-13投稿
私は、待っている。
いつか私を目覚めさせてくれる誰かを。
私を不幸にする全てから守ってくれる王子様を。
私の知恵や判断を必要としている民衆を。
私の美貌にひかれる神々を。
私は悠久の眠りについて待っている。
世界の果ての古城の地下、夥しいまでの蔦に覆われた廃墟の、一際大きい奈落の下で。
光りなき暗闇の底にある、鍵のかかった棺で、待っている。
身に余る運命を背負った何者かの栄光や富、あるいは祝福を与えるために、私は待っている。
何千年も、何万年も。
永遠に……。

一方で、私は消滅しかけてもいた。
それは無限大の可能性に、無尽蔵の選択に、そして果てのない許容によって形づくられる未来(歴史)に押し潰されようとしている。
これは賭けだった。
私という存在を全ての時間軸から解き放って、永遠の存在とするための、究極の生存戦略。
完璧で完全無欠な現在を「物語」にして、この世界に生き延びるための崇高な計画。
さながら私は時間旅行者。古びた棺はタイムマシン。誰かに見つからなければ、生死すら確定できない、哀れな猫。
まだ見ぬ貴方は私を見つけられるのかしら……。
私の周囲にある、沢山の棺から、私を……。

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