「紅ちゃん…」 あやめは階段に立ち尽くす。 人形の様におとなしくなった紅を連二郎はしば...
「とにかく健吾はいないのだから帰ってちょうだい。もうじき店を開ける時間だから」 連二郎は笑っ...
紅と健吾の婚礼から四年が過ぎた。 祖父母は店の全てを紅達夫婦に譲り、知り合いの田舎で隠居生活...
「なんて事だ…」 可愛い孫が暴漢されたと知った清松はその場に座り込む。 「心配するな。私がそい...
鶴の顔が歪む。 「今頃、何の用です?金持ちの道楽に付き合ってる暇なんかないんですよ。私達親子を路...
そこで健吾の口が戸惑った。 はぁんと顔をしてあやめが口を挟む。 「男と女になったんだね?」...
一緒に誘ってみよう。紅はあやめを茶屋に置き後を追った。 吉原は遊女が足抜け出来ないよう入...
店の前を金魚売りの声が通り過ぎる。 昼間は吉原から出られない遊女達目当ての行商人で賑やかだ。...
紅は渋々帳場に向かった。呼ばれた事に心辺りがある。 もう時期16になる紅は吉原で噂になるほど...
紅(べに)は吉原生まれの吉原育ち。廓(くるわ)の若旦那だった紅の父親が売られて来た紅の母親を見初め...