不意に私は警戒心が強くなった。 いつもぼんやりしていて、うまく現実が掴みきれていなかった。けど、...
「……離せ」 怒りを押さえながらも低い声で言うと、クロはおもしろがっているように口角を上げた。 ...
夜が近づくにつれ、館内は少し肌寒くなってきた。 「……そういえば、今日ルリはどうしたんだ?」 ...
怒りの矛先を向ける相手すら私にはいない。 路地裏の隅にうつろな目をして座り込む少女。それが私...
ボクは黒に沈みたいのに ダレもボクを殺してくれない そんなくだらぬ人間ですか?...
キンは、すっかり沈んでしまった裕一を見て、申し訳ないような気持ちに駆られていた。 何も追い詰める...
「違う!俺はダイダイじゃない!!」 気づけば裕一は叫んでいた。 嫌だ、と思った。初めてキンに対...
誰しもが願う。 「幸せになりたい」と。 けれどこの世には±0という概念があって、幸福も不幸も平...
「……俺にだってわかんねぇよ。何でこんなにルリが気になるのか」 ぼそりと呟いた裕一に、キンは、ん...
裕一はやがて、半開きのまま停止した自動ドアの前に立った。 するりと体を滑り込ませると、薄暗い廊下...