樋泉杏華は躊躇わない。先程の高威力の魔術を間近で視認しながら、それが結界を貫き向かいの山を刔っ...
細かな肉片へと化した男を視て呟き、はたと何かに気が付いたように「あ」と声を漏らした。見開いた目...
「はっ……はっ……はっ……っぐ」 山中、大きな犬の背中に負われながら、男が荒い息を吐く。...
「生きてるって、楽しいか?」 白い。窓に掛けられ、陽光を透かす薄手のカーテンも。清潔に...
「ねぇ、あなた」 「カヅキ」 「……え?」 「名前だよ。兎の場所の、歌うに月で、兎場歌月...
むせ返るような血の臭いに満ちた空間で、ゆっくりと身を起こす影がある。少女だ。返り血で髪と肌を斑...
茂みが揺れる。周囲一斉に鳴り響いたそれの音源は猟犬だ。全部で十以上は居る。くそ、まだこんなに居...
「少し、その男に聞きたいことが有るの。だから……」 「やあ、久しぶり」 「……殺さないでく...
…………まだ! 跳躍しながら半身を捻り、後ろ回し蹴りを近くの木に叩き込んだ。衝撃。足が軋...
背側の大きな幹に身を隠しながら、“それ”の元に近付いた。慎重に、木の影から身を出さないようにし...