ハシモト君の容姿はかおりがノートに描いていたものそのままだった。コートのような真っ黒で妙なパーカを着...
今にも雨が降り出しそうな夕暮れ時 椿屋かおりは青ざめた顔でバス停に立ち尽くしていた。 ない。...
摩天楼は消えた。 赤い空が広がるだけ。 何事もなかったかのように今日は終わるのだ。 ライトが彩る。...
そして突然高笑いを始めたのだ。 宝石はコロコロ色を変えていく。 街は見たことのない有り様だった。大...
指先から伝わる冷たさ。何も言わない。 ふと見ると、ほんの僅かな隙の開いた口の端に、何かがきらりと光...
不思議と涙は出なかった。動かないタビトは人形のようであった。 それどころか自業自得だと思えてきた。...
知らん顔して街から出て行けばよかったのに。 「…だって…」 はっきり理由を口にすることができな...
死ぬつもりはなかった。 この中にタビトが紛れているかもしれない。 重い。圧迫感。 リリィは目を凝ら...
「何してる、早く逃げろ!」警官もリリィの体を取り押さえて逃げさせようとする。 「いや!タビト!」 ...
リリィはとにかく走り回った。どこに行っても悲鳴の嵐である。目の奥が熱くなってきた。 お父様は? ...