「会社、首になりました。今月末で終わりです。」 お風呂から、上がった夫が、突然、言った。...
月がもう、大分傾いていた。朝が近い。 ガルガは眠るのを諦めて身を起こし、水差しを手に取っ...
8月13日 朝、目覚めたとき、昨日聞こえていた音はすっかり聞こえなくなっていた。歯を磨き、顔を洗...
こんなにも溢れる想いはどこから出てくるんだろう。 欲望にも似た不確実で形のないものだけど、確か...
翌日の日曜にミカと、生まれて初めてのデートをした。20歳の年上だと聞いた時は、同い年ぐらいだと思っ...
さすがに一晩中口にした甘ったるい紅茶に胃が焼け付くようだ。 後輩が云うほどの夜帶のきつさはなく、...
遠くに「紅華楼」の明かりが見える。 「綺麗よね。あの明かりは消してはいけない」 紅は小...
あまりに率直に用件を切り出したので山柴組の親分は笑った。 「嬢ちゃん。あんた駆け引きとか根回...
ひらひらと、降り始めた雪を見上げながら。 その先の灰色の雲を睨みながら。...
林の中は真っ暗だった。ふたりが持ってきた懐中電灯がなければ、右も左もわかったものではないだろう。だ...