青年は、さらにこう続けた。
「少しお話をしたいことがあります。今、お時間頂いてよろしいでしょうか。できれば、拓也君にも一緒に聞いてもらいたいのです。今が無理でしたら、こちらの連絡先をお教え致しますので、時間に余裕ができたら、お電話していただきたいのです。まだ、急がなくてよいですので…」
何がなんだかわからない春香は、ぽかんとしている。そして、とりあえず落ち着こうと思い、深呼吸した。三回ほど繰り返してから、こう言った。「急に、知らん人からそんなん言われてもよくわからへんのですけど…とりあえず、今はあきません」
「そうですか。では、これが電話番号です。先程も言いましたが、別に急がなくても結構です」
そう言って、春香に紙を手渡した。
受け取った春香は、眉間にシワを寄せた。
「からかってるんですか?こんなもんのどこが電話番号なんですか?」
受け取った紙には、見たことのない絵らしきものが書かれていた。青年は春香にそう言われて、こう答えた。
「拓也君なら読めますよ」そう言って、青年は立ち去った。まだいいたいことはたくさんあった春香は、半ば肩透かしを喰らった感じである。
立ち尽くしていた春香は息子を見た。そして、息がとまりかけた。続