誰もが同じ存在だったら、争いなんて起きないのに…と、誰かが言った気がした
ある寒い春の日だった
ただブラブラと、大通りを歩いていた
辺りに人影は皆無、車さえめ走っていない
最近ではもう馴れたが、この静まり返っている結構大きめな街はどこか不気味だった
―無理もない。ここはそういう所だ
少し前の話になるが、この隣りの街で大量虐殺事件が起きた
その際、その街は消滅。残ったのは灰の世界だけだった
犯人はもちろん、人間ではない
この世界を人間と二分にする存在、『悪魔』だ
悪魔…なんていうとあの化け物染みた姿が浮かぶだろうが、見掛けは本当に人間と変わらない
ただし、人間が束になってかかっていっても虫けらのごとく扱われる様は、文字通り人間の皮を被った化け物だ
そんな街中を一人出歩く俺も、普通じゃない
対悪魔戦闘教育専門学校、その名の通り悪魔に対抗しうるある才能を持つ人間を集めた、人類の最終兵器だ
そのある才能というのは、魔法
主に十代の子供から集められたその学校は、今まで多大な戦果を挙げてきた
この存在により、人間と悪魔ら均衡した立場にいられるのだ
不意に、ポケットの中の携帯が鳴る
しんと静まったこの街に、着信音が大きく鳴り響いた
手慣れた手付きで、それに出る
「…はい」
『瑛か?今隣街にいる。…どうやら奴等は近くに拠点を作っているわけではなさそうだ。引き上げるぞ』
「…了解」
パタン、と携帯を閉じる音がやたら響く。どうやらこの街の心配は杞憂だったらしい
「…さて…行くか」
元来た道に引き返し、歩き始めた
「誰もが同じ存在なら、か…」
歩きながら、一人ぼやくように言った
「…詭弁だな。それなら人間内の争いはないはずだろう?」
街が静かなのもあり、何故かその言葉は響いた。
「…それも詭弁…か」
静かに呟き、この街を後にした