沈黙が続いている。彼等を暖めていた燈は消え、満月の明かりのみが二人を照らしていた。
「あの時、俺は……!!」
突然雅流が息が詰まったように口を開閉させる。口をぱくぱくさせる様はまるで餌を求める魚のようだ。しかしその形相はとても魚などといった甘ったるいものではない。血管を浮きだし窒息死しそうなまでの顔つきだった。
「がぁっ…!!っぁあ!!」
額から大量の汗を吹き出している。何が起きているのか優には全くわからなかった。
「おっ、おい!雅流大丈夫かお前!」
突然おかしくなった雅流に近寄りつつも、優は不審を募らせていた。どうみても目の前にいる男は只者ではない。
「おい!どうした!」
肩を前後に揺すり安否を確認しようとする優にはこの時雅流の中で何が起きているのかは知る由もなかった。
誰も気付けぬこの状況。雅流の中では今、壮絶な葛藤が行われていた。