平助の事は気掛かりだが、私は『さよ』と『ちよ』の居場所を探していた。平助達が住んでいた長屋を訪ねると、私の姿を見て隠れてしまう長屋の連中は、やはり何かを知っている感じがしてならない。
仕方ない、今日も何も得らず終いだ。私の袖を数回引っ張る者がいた。後ろを振り向くと、長屋に住んでいる者で平助達と親しくいていた三〇半ばの女だった。
「お侍さん…ここじゃあ、話もなんだからさぁ。家に来ておくれよ」
女は小声で耳打ちをしてきた…私は女の言う事を聞き、女が住んでいる長屋に行った。
女は私を長屋に招き入れると、直ぐに戸を閉めて誰も入って来ない様にした。そして、私にさよとちよの事を話し出した…。
女の話を聞いて、私は怒りで気が触れそうになった。
平助が乞食同然の形になったのも訳が判った。明日、勤めが終わり次第平助の所へ行かなくてはならないと思った。母が私に託した文の通りであれば、裏付けをしなければならない。
腹を探るだけでは埒があかない、弥一に探りをさせるのが一番だろう。弥一はあれでも、顔が広い…何かを得る事は間違いないだろう。
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