11月30日、11月の最後の日なので今日は、“ゴミ人間廃棄日”だ。会社に行くのが一番嫌なこの日だが、僕はいつもどおりに出勤した。席に着くと、書類の山が消えていた。そして名前のプレートに自分の名前ではなく、高橋という名前があった。
「まさか・・・」
下痢がもれそうで家までの道のりを走りたいのに漏れそうだから走れなくて、小走りで走っている小学生時代にかいた冷や汗にそっくりの冷や汗が、僕の下着をびしょ濡れにした。心臓の鼓動は早まり、まるで短距離走の後のような感じだ。エレベーターの開く音が遠くで聞こえた。前にこの階でゴミ人間が出た時に見た時は、エレベーターから黒いスーツの2人組の男たちが入ってきて暴れるゴミ人間になった男を連れて行く凄まじい光景が印象に残っていた。その光景を思い浮かんだ僕は、どうするか脳みそをフル回転させた。デスクの囲いの上からエレベーターの方角を見ると、黒いスーツの男たちがこちらに向かってきていた。僕は、確実に自分が選ばれたんだと確信した。
「どうしよ、どう・・しよ・・・!!」
思わず小声で言ってしまうぐらい焦っていた。周りの社員が僕を見ている。
「霧野君ちょっと、いいかな?」
部長と黒いスーツの男たちがこっちを向いて歩いてきている。部長は手招きしながら僕を呼んでいた。周りからは、彼が選ばれたんだ・・・とか残念だよ、霧野・・・など同情の言葉が聞こえてくる。
僕は走った。エレベーターとは別の方角にある非常階段に向かって全力疾走した。僕が走ると同時に黒いスーツの男たちも走ってきているのがわかった。後ろを振り返ってみると男たちが懐から何か取り出したのが見えた。
「うわぁぁぁあああ!!」
僕は叫びながら走っていたが、急に体に銃型のスタンガンを撃たれ、体は垂直のまま廊下に倒れこみ、気絶した。