先輩は私のコトなんか知らない。
委員会も一緒じゃないし、部活だって違った。
先輩を見ることができるのは、バスの中だけだったんだ──
私はドキドキしながら先輩の方を見る。
やっぱりかっこいい。
「咲良!!!水無月先輩居るよー。ほら!!!あそこ」
「湖波声大き…」
「咲良ぁ!!!アドレス聞いてこい!!!」
ドンッと友達が私の背中を押す。
「ぁ…あの…先輩…その…メールアドレス教えて下さい!!!」私はよろめきながら言う。
「いいよー」先輩は朗らかに言う。
「ありがとうございます」私は最高の笑顔を見せる。
そうなりたい。
そうしたい。
でもそれは私の妄想の中での出来事で、
実際には私は転びそうになりながら先輩を見つめることしかできない。
水無月先輩はかっこいい。
だからモテる。
だから私は見合わない。
私は先輩が大好きだけど。