『ドルルル・・・・・』
何もない岩山、舗装されてない道を大きな音を出し『それ』は駆け上がって行く。
途中幾度か小石が『それ』の頭上に降り注いで来たが、『それ』は何も気にせずただひたすらに上を目指していた。
『それ』、いや『それに乗っている彼』からは、より大きな『何か』を弾き返そうとする『まがまがしい』気迫のようなものさえ感じられる。
暫くして『それ』は豪快なエンジン音を止めた、大型のバイクいや後方にタイヤが二つあるから『バギー』と呼べば良いのか・・・とても常人では乗りこなす事は困難だと思われる乗り物から『彼』は降り、ジャケットを脱いだ・・・・。
その『怪物とも言える乗り物』を調教するかのごとく乗りこなすに相応しく、『彼』の身体は胸板が厚く、骨太で肩幅は広く、タンクトップから伸びた腕は肌の焼け具合とその太さから『木の幹』を想像させた。
彼は少し歩を進め先にある下りの道があるのを確認すると、更に下界を見下ろす。
彼の目線は周りを山で囲まれ、鬱蒼とした森の中心に注がれており、そこには多
くの建物が並んでいた・・・・。
「ゴル!!」背中から誰かの声が聞こえた、彼が振り返るとそこには、彼の『バギー』しかなく誰もいない・・・・
しかし彼の目線はバキーにいや正確に言うとバギーの荷台に注がれていた。
そこには、荷物を保護する為のシートがかけられていたが、そこがモゾモゾと動くと、隙間から何かがはい出て来た。
それは20センチはあろうかと言う大きな『蛙』であった。
蛙は彼を見つめると口を開け「ここで間違いなさそうだな、ゴル・・・」彼に話しかけた・・・・
蛙が口をきいているにもかかわらず、彼は極普通な顔をしている。
「ええ・・・・ドクター・・・・」
ゴルはボケットに手を入れると小さな箱を取り出し、留め金を外し開けた・・・。
箱の中からは音が聞こえる、どうやらオルゴールのようである、美しい曲を奏でていたがどこか哀しそうにさえ聞こえた・・・・・。