私−舞吹雪・刹那は今豪華な部屋で高級ハーブティーを口にしている。ついこの間まだ質素な部屋ど手術室を行き来していたのだがある手術着姿の男、我昭門・健次に(雇い先が決まった)と、言われた時からこんな上流階級的な生活をさせてもらっている。正確には豪華な生活をさせられている。まさにそんな感じだった。 と言ってもこの生活が嫌と言うわけでもない。むしろ大歓迎だった。 ところで私は記憶がない。舞吹雪・刹那という名前も先程の我昭門・健次と言う手術着姿の男から教えてもらった名前だ。 それにもうひとつ問題がある。健次が言っていた・・(雇い先)と言うのが非常に気になる。 確実に私に関係していると言うことは健次の口調から容易に推測できた。 そうこうしている間に部屋の扉が開いて健次が入って来た。 「お前には雇い先の元に行ってもらう」。と言う言葉に私もさすがに・・「好い加減に雇い先ってのがなんなのか教えてくれない?!そもそもあんた誰?!私は一体何?!!!教えてよ!!!!」。最後の怒声が部屋中に響き渡り、それが止んだと同時に健次が話だした。 「それはお前が雇い先に行けば解る。その方が俺が教えるより簡単だ」。と言いながら健次は手にしていたアタッシュケースを私に差し出した。 「これは・・・何?」。至極当然の質問。 それに対して健次は冷静に告げた。 「中には銃が入ってる。銃とは鉄の弾を飛ばして人を傷付ける武器だ」。もちろん記憶がないと言っても銃のことは覚えている。 渋々アタッシュケースを受け取った私に健次は最後にこう言った。「中には地図も入っている。お前が雇い先に行けば銃が必要になる。・・・・行け」。健次の言葉に従い、私は長らく住んでいたこの場所を離れ、地図の指す雇い先へと向かった。 初めてこの建物の外に出てみると意外とこぢんまりしていた。 私は覚悟を決め、忘れた記憶を求めて建物の外へ足を踏み出した。