「でも僕は やっぱりそいつが許せない、一緒に来てくれないかな?あなたの事ぐらいは守れると思うし、相手がいくら狂ってるとしても、女には負けないと思う…」 「分かったわ、でも何かあったら私を置いてすぐに警察に連絡して、それならいいわ」僕は うなずいた。 僕らは居間を出て 廊下に出た。明かりが付いて気が付いたんだけど廊下や壁は血だらけだった。僕はこれから 得たいの知らない気が狂っている女の所に行くと言う事が 改めて恐ろしい事なんだと思うと足がガクガク震えはじめてきた。 「怖いの?、やっぱり警察に連絡する?今ならまだ、あの女いないみたいだし…」 震えているのが分かったのか彼女が聞いてきた。僕も(やっぱり、そうしましょう、あなたも傷が酷いですし、相手は気がおかしくなって何をしでかすか分からないですもんね)って言おうと思ったけど、母の事を思うと やっぱり僕が決着をつけないといけないと思った。 「…うん、でも『そいつ』だけは、絶対にゆるせない!僕は殺ります!」 彼女は(分かった)と言う顔をして小さく頷いた。 階段に差し掛かると、怖さより、滅多滅多に『そいつ』を殺る事に意欲が湧いて来た様な気になっていた。 「ねぇ?一つ聞いていいですか?」 「なぁに?」 「その女は なぜ家を狙って来たんですか?」 「……」「だって、家は僕と母さんの二人暮らしだし、母は人に恨まれる様な人じゃなかったんですよ」 「それは、私が一番よく分かってるわ、その平和な家庭を何の意味もなく襲ってくるから気が狂っているって事じゃないかしら」 「そうですよね、ましてや あなたにも襲いかかるなんて、一体何者なんでしょうね」 「あの目…… 思い出しただけで怖いわ……人間の目じゃなかった……」 彼女の長い髪の毛で 見えはしなかったけどひどく脅えているのは分かった。 もし、何かあった時、僕はやはり この人を置いて警察には行けないと思った。