暗い部屋はまるで海の底。パソコンが放つ光は提灯アンコウのように、不気味にあたしを引き付ける。
『彩は恋バナとかそういうの聞ける？純粋に。クララな気持ちで』
ディスプレイに文字を連ねる。
返事を待ちながら、目を閉じる。
このまま魚になりそうだ。目をあけると新たな文字が出現していた。
『クララな気持ち？』
画面に出る文字は、文字に過ぎないけれど。想像力を働かす。すると彼女があたしの目の前にいる気がする。その瞬間、声が聞こえる。
「クララな気持ち？」
聞こえる気がするだけだが。
「そう。なんつーのかな。アルプス育ちで超純粋な？？チーズ溶かして食べちゃうぜみたいなくらい。純粋。」
あたしが答えると彼女は困惑する。いや、するように感じるだけ。
「クララて都会育ちじゃない？どっちかっつったらハイジだょ」
「嘘。クララって都会育ち？」
彩とはネットで知りあった。きっかけは覚えてない。ただ、チャットで偶然に出会った。今では彼女に愚痴をぽろぽろ零している。
自分で言うのも何だが、学校での評判は良い。皆の話は聞くし、褒めるし、悪口は言わない。よく『性格がいいね』と言われる。あたしが人の悪口を言わないから。皆のコトを愛してると勘違いしてるのだ。
馬鹿だろう。
悪口言ったって、自分の状況が悪くなるだけだ。あたしは?番自分が可愛いのだ。嫌いな奴なら嫌われていいというが、嫌われて得することはない。いざという時に自分を助けるのは人脈だから。あたしは嫌いな子にも笑顔をふりまく。
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