之秀『今回モ、持ツてんダろ?』
之秀『出セよあノナイフを』
望を切り刻んだ、あのナイフを
叶呼の唇が、ニィッと吊り上がる。
視線が俺の顔を睨め上げるのと同時に、叶呼の手に、いつの間にか刃渡り四十センチぐらいのバカデカいナイフが握られていた。
俺は踏み出した。
右手のナイフを意識しながら叶呼との間合いをいっきに詰める。
叶呼『!!』
そして、無防備な叶呼の腹部にナイフを
バチチッ
刺せなかった。
之秀『ナ、ナんダト!?』
力なく俯せに倒れ込む。
叶呼『バカバカバーカ!ナイフだけな訳ないでしょ?バーカ!あははははは!』
倒れた俺を下目にばか笑いしている叶呼の左手にはスタンガンが。
運動中枢を一時的に麻痺させ、動けなくするタイプかよ…。
気絶しないってのがなんともタチが悪い。
之秀『…ぐ…』
叶呼のナイフばかりを意識していて気がつかなかった…。
叶呼『いい加減さ、放っておいてくれない?私別に姉の事なんてどうでもいいし』
なんだと?
之秀『どうでも…いい…だと!?』
ゆっくりと顔を上げる。
望を殺しておいて…どうでもいいだと?
四肢に力を込めてなんとか立とうとする。
叶呼『ほんとしつこい。あんた死にたいの?』
さっきまで笑っていた声が急に鋭くなった。
之秀『て…テメェを殺シたらシんでヤル』
叶呼は肩をすくめ、溜め息を落とす。
叶呼『いやよ。私まだ死にたくないし。それより貴博どこ?』
之秀『…キヒヒャヒャヒひひヒ!アハハはははは!誰が教えルかヴぁぁぁぁぁカ!!!』
右腕を強く踏み付けられる。
之秀『ウくっ!!!』
何度も、何度も踏み付けられる。
叶呼『バカ、バカ、バカ!バカはあんたでしょ!?』
之秀『グァぁ!』
踏まれていた右腕に激痛が走った。
叶呼が鋸でも扱うような動作で、俺の腕にナイフを切り入れてきた。