春香は、青年が去った後もしばらく動けなかった。
子連れの女が立ちすくんでいたにも関わらず、他の人間はそんなことは、お構いなしでときの流れにそって動いていた。
拓也が、母の服の裾を引っ張った。そして、我に帰ったように春香は、拓也の手を引いて、買い物をすませた。買い物を終えた春香は、スーパーをあとにした。
家に帰ったあとで春香は改めて、青年に渡された紙を眺めた。やはり、そこには見たことのない絵らしきものが描かれているだけだった。同じように、眺めていた拓也がスーパーで突然倒れたときの声でこう呟いた。
「09066668969」
そう呟いて、拓也はぐったりと体を横倒しにして倒れた。
「大丈夫か!?どないなってんねんな!ほんまにわけわからん!しっかりしい!せや、あの兄さんに電話したらええんや!でもほんまに繋かるんやろか。考えとってもしゃあないな!」
いうが早いか春香は家の子機を引ったくり、拓也が呟いた、番号を思い出しながら、プッシュした。すると、すぐにあの青年の声がした。
「どうしました?この番号が分かったということは、拓也君がまた倒れてしまったんですか?」
「あんた、こうなること分かっててこんな紙渡したんか?あんた何者やねん」続