『大本営は一致して、今度の決戦、陛下の御親征をば奏上すべしとの、最終結論に達しました』 遂にこの時が来たか―前々から覚悟を決めていたが、改めてエタンは、その意味する重みを深く噛み締め直して、ゆっくりと椅子を元へと回転させて、つけっ放しのスクリーン電光を背に浴びながら、相対位置が反対になったスコットに向けて顔を上げた。 『奏上を受け入れ、皇帝の職務の完遂に努める』 しきたりに従い、簡潔な表現で、エタンは承諾した。 大本営次長は、デスクの向こう側に引っ込み、パネルカ―ドをその上に返して、再び九0度の正確な直礼で、謝意を捧げた。 『陛下の御栽可、慎んで拝領致します。我等将兵一同、一度陛下の御尊姿を目のあたりにすれば、勇気雀躍、良くその期待に応えんと、実力以上の奮戦振りで、いかなる大敵をも、退けましょう。未曾有の国難、絶命の死地たりとて、如何程の物でもありますまいや。何人たりとて、陛下に危険を及ばしたりは、致しませぬ』