< 第 二 話 >
A乃の話があって以来、私のクラスでは「ナンパされる事」がちょっとしたブームになった。
まず始めはA乃のトイレ友達の仲良しグループ数人が、A乃の「指揮」のもとに「戦地」へと赴いて行った。
そして同じく「武勇伝」を披露。
そんな事が週末ごとに繰り返され、休み明けは「報告会」がお決まりとなった。
とは言え、ナンパされてその後に男性とどこかへ行ったり、ましてや「どうにかなる」事が目的ではなかった。
それまでマンガや雑誌の中の出来事でしかなかった「ナンパ」というモノを、ただほんのちょっと体験してみたい、…そんな好奇心が彼女達を動かしているだけの事だった。
その後も「ナンパされブーム」は続き、半年も経つ頃にはクラスの殆どが「経験」していた。
私はこの件に関して内心では全く興味も関心も無かったのだが、一応、表向きは話題に乗るフリをしていた。
彼女達が言うには「笑顔が爽やかで、ちょっと強引な所がワイルドな雰囲気があってイイのよねー!」…だそうである。
話を聞いていて一つ不思議に思ったのは、服装や背格好から察するにナンパしてくる男性はいつも同一人物らしかった。
その男性は決まってサングラスに無精ひげを生やし、ジャケットを着て派手なネクタイをしているという。
それにしても毎週毎週、手当たり次第に女子中学生にまで手を出すなんて、世の中にはよっぽど女性に飢えているオトコがいるんだなぁ、と半ば呆れていた。
そして、いよいよ「最終兵器」が投入される事になった。
クラスで一番なのはもちろん、学園内でも一番の美少女と自他共に認めるS美の登場である。
本人非公認ではあるが下級生の間ではファンクラブも存在し、またバレンタインデーには全学年から山のようにチョコレートが贈られる。
私は「その手の趣味」は無いが、女の私から見てもS美は将来、女優かモデルになるであろう事が容易に想像出来た。
つ づ く …