電車が来た。たくさんの人が乗り降りしている。見ていると気持ち悪くなる。電車はあまり好きではない。 久しぶりに駅のホームに立ち前と同じ様に立っている。高2の春に僕は自殺をしようとした。別に死にたかった訳でもない。ただ、生きている理由もなかった。黄色い線より前に立ち飛び込むタイミングをはかっていた。目をつぶり意志を固め始めた時女の子が僕の手を握った。驚きその子を見るとまだ、小学生にもならない小さな女の子だった。「危ないよ」と一言言い笑顔で手を振りながら電車に乗って行った。ボーっと電車を見送り何事もなかったように家に帰った。 今日はあれから丁度十年。歳をとり立派な社会人とまではいかないが働いている。中身はまるで変わっていないのが笑ってしまう位情けない。 生きている理由がまだ見つからないでいた。 目をつぶりあの時の暖かさを待っていた。 電車が来た。 僕の体が軽くなり電車は急停止した。