「それよりはお前みたいなヤツとくっついて欲しいと思てる。」
「…いいんかよ?」
「友達がお前のこと話すの聞いたことあんねん。アイツと同じくらい人の気持ち大事にするヤツなんやろなぁと思った。
そんなヤツがアイツを好きになってアイツを幸せにしてやれるならそのほうがずっといい。」
人の気持ちを大事に?
お前だって十分だよ。
自分が彼女を傷つけるより他の男に彼女を奪われても彼女が幸せになるほうがよっぽどいいんだろう?
自分が傷つくほうが彼女を傷つけるよりマシなんだろう?
「いいか。俺が初対面のお前にこんなこと話すんはアイツを絶対幸せにして欲しいからや!お前に!」
強くそう言う田村は辛そうにしか見えなかったけどそれを言うのは田村の気持ちを踏みにじることになるような気がした。
「わかっとる。お前に言われなくても絶対俺がアイツを幸せにしたる。」
「…頑張れよ。」
「タク!今のとこリズムおかしくない?」
我に返り沢口の顔を見る。
「タク…?」
「お前田村のこと好き?」
一瞬叩かれたような顔をして少し戸惑ったのちすぐに答える。
「すきやで!ずっとすごい大事な友達やもん。」
…友達。
お互いを傷つけ合わないため自分の気持ちを誤魔化して。
どうしてこんなに相手の気持ちを大事にするヤツらが幸せになれないんだろう。
2人の心には暗くて冷たい雨が降り続けている。
上を向けなくなるような。
止むのを願うのをはばかるような。
俺が2人を晴れたところまで連れて行ってやりたい。
2人を太陽の下で笑わせてやりたい。
何だか無性にそう思った。