時に「愛」や「好き」という言葉に羨ましさを感じる。僕の横で恐ろしい顔を持つ彼女は僕に心を許し、僕に愛されてると思いながら寝ている。僕は彼女を愛していない。
彼女は以前は美人ではあった、しかしモデルや女優ほどでもなく、程よい美人ぐらいであったろう。が、それでも小さなサークル内ではマドンナだ。その顔も1年前の不慮の事故で顔の半分を火傷し彼女の人生は大きく変わった。憧れのマドンナは皆の哀れみの対象になり、半年経った頃には誰も見舞いにさえ来なくなった。それでもぼくは通い続けた。以前では手を上げ飛びついても届くことのなかった彼女は、足元にあり拾う事ができるようになったのだから。輝きを失ったダイヤモンドを誰も拾いはしなかったが、それでも元は皆が憧れたダイヤモンドだ。そんなことぐらいじゃなきゃ僕が高価なものを手に取ることなどない。僕なりの優越感。僕は彼女愛してはいない。