万華鏡(12話)

飛水  2006-12-09投稿
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11月に入り、少し肌寒くなってきた。
今、ホームの最後尾に私はいる。

踏切音が聞こえてきた。
見慣れた白い箱がこちらに向かって来た。

‥っとそのとき、聞き慣れた声が横からした。
「よっ!」

‥凌だ。

扉が開く。
凌はスタスタと車内へ入っていく。私もその後を慌てて追った。
扉が閉まる。電車が動きだした。

凌は扉にもたれ、窓の外をじっと見始めた。
私はどうしたらいいか分からず、少し擦れた彼のローファーをただ見ていた。


駅に着いた。
彼は真っ黒のマフラーを巻き直し、一人歩き出す。

私は彼の一歩後ろを歩く。

‥距離を、感じた。



駅周辺の賑やかさがなくなり、次第に周りが淋しげな場所に入ったところで、凌は立ち止まった。


「ごめんな、あのとき」
凌は後ろを振り返る。

私は俯きながら横に首をふった。

「‥瞬、‥癌だって」

私は凌をみた。
彼は静かに目をおとした。

「‥もう長くない‥‥」

「ばかだよな、あいつ」
どこか遠くの方をみながら凌は話す。

『‥‥‥。』
頭が真っ白になるってこういうことだと思った。

「‥‥まぁ、大丈夫だからさ!今度見舞い、来てくれよなっ」

『‥うん。』

そしてまた歩き出した。


‥私の気持ちは
まだ止まったままだった。

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