11月に入り、少し肌寒くなってきた。
今、ホームの最後尾に私はいる。
踏切音が聞こえてきた。
見慣れた白い箱がこちらに向かって来た。
‥っとそのとき、聞き慣れた声が横からした。
「よっ!」
‥凌だ。
扉が開く。
凌はスタスタと車内へ入っていく。私もその後を慌てて追った。
扉が閉まる。電車が動きだした。
凌は扉にもたれ、窓の外をじっと見始めた。
私はどうしたらいいか分からず、少し擦れた彼のローファーをただ見ていた。
駅に着いた。
彼は真っ黒のマフラーを巻き直し、一人歩き出す。
私は彼の一歩後ろを歩く。
‥距離を、感じた。
駅周辺の賑やかさがなくなり、次第に周りが淋しげな場所に入ったところで、凌は立ち止まった。
「ごめんな、あのとき」
凌は後ろを振り返る。
私は俯きながら横に首をふった。
「‥瞬、‥癌だって」
私は凌をみた。
彼は静かに目をおとした。
「‥もう長くない‥‥」
「ばかだよな、あいつ」
どこか遠くの方をみながら凌は話す。
『‥‥‥。』
頭が真っ白になるってこういうことだと思った。
「‥‥まぁ、大丈夫だからさ!今度見舞い、来てくれよなっ」
『‥うん。』
そしてまた歩き出した。
‥私の気持ちは
まだ止まったままだった。