< 第 三 話 >
週末の放課後、「結果を楽しみにしていてね」と自信たっぷりな笑みを残し、S美は教室を後にした。
他の者は声を掛けられても「予定があるから」「人と待ち合わせをしているから」などと言って誘い自体は断って帰ってきた。
興味本位とは言っても所詮は中学生、やっぱりどこかで「不安」や「心配」といった心理が働くようだ。
だが学園のアイドル・S美の事となれば、「何か」を期待せずにはいられなかった。
皆はS美の話を心待ちにしていた……のだが、休みが終わった次の日、S美は教室に現れなかった。
風邪でもひいたのか生理痛か、あるいはナンパされた男に売り飛ばされたのかと過激な意見も出た。
しかし次の日もその次の日も、一週間が過ぎてもS美は登校してこなかった。
担任の先生は親に連絡を取ったが、彼女の家でもS美を探しているという。
ほどなくして先生達の問い詰めによりナンパの事が知れる事となり、大人達は早速、現場へと向かった。
警察にも捜索願いを出してS美を探したが、それらしい女の子は見つからなかった……。
「女心と秋の空」という言葉があるが、特に女子中学生の気分は変わりやすい。
ナンパの事は自然とクラスから消滅し、アイドルやオシャレなど他愛も無い話題が教室を占拠するようになった。
やがて時は過ぎ、S美が見つからないままに私達は卒業した。
私はナンパブームがあった事などはすっかり忘れていた……。
高校生になった私は環境の変化や新しい友達との出会いなども影響して、それまで内気だったのが明るく陽気な性格に変わり、一つ年上の彼氏も出来た。
今日は彼氏と一緒に映画を観ようとネオ・シブヤの『ポチ公前』で待ち合わせをしていた。
初デートという事で張り切ってしまい、かなり早い時間に到着した。
流石は有名な待ち合わせスポットなだけあって、周囲には私と同じように誰かを待っている様子の人達がそこかしこに見受けられた。
手持ち無沙汰に携帯を取り出し、意味も無く広げたり畳んだりしていると「トントン」と後ろから肩を叩かれた。
ひょっとして彼が……! と思って振り向くと、そこには見知らぬ男性がいて、爽やかな笑顔で話し掛けてきた。
つ づ く …