冬
それは、彼女が自傷行為を始めた季節。
彼の恋が終った季節。
いろいろな季節。
「悠ちゃん」
一人の少女が走ってきた。
「七瀬!どうしたんだよ」
「だって・・・・悠ちゃん高校生で朝一緒に行けないから」
少女の名前は大塚 七瀬
ごく普通の家庭で育ち普通の中学二年生。
青年の名前は柊 悠一
高校二年生で近所のお兄さん。
「まあ・・・・・電車は一緒に乗れるけどさ・・・・・あとは別々だよ?」
「だって、お話してると楽しいんだもん」
七瀬は微笑みそう言った。
「そうか・・・・」
悠一の声は冬のように冷たい。
行動も全て冷たい。
「・・・・・・・」
悠一は七瀬の腕を見ていた。
手首に包帯を巻いていてケガかと思ったが本当のところは気になる。
「七瀬、手首どうしたんだ」
「えっ・・・・・ああ・・・これ、猫にやられた」
この時、七瀬の異変に気づいていたがそのままにしておいた。
「三番ホームに上り列車が参ります。黄色い線の内側にてお待ちください」
列車が近づいてくる。
強い風が吹いた