航宙機動部隊30

まっかつ  2006-12-11投稿
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彼等統合宇宙軍の勇名は、既に中央域にも轟いていたが、それ以上に、数々の残忍さに満ちた伝説と共に悪名の方が、少しだけ誇張されて、星民達の口伝に膾炙していたからであった。
文明の先進地帯から、優れた賢人の到来を待って、未開と不毛に覆われた辺境世界の統治者として迎え入れ、その御世に服す。
古地球時代、文明の普及が均質ではなかった特に初期に、ある種の知恵として、かなり頻繁に行われていた事が、神話や伝承や儀式等で、うかがわれる。 中には、招かれざる客人が、侵略や収奪を湖塗する為、都合の良い目くらましとして、そう演じた事もあったのかも知れないが。
そのひそみに倣った分けでもないが、統合宇宙軍サイドの対応は、気持ち悪い程に良心的だった。
この世界では驚天動地の、不祥事にすら属しただろう。
懐に飛込んだ獲物を救ってやる等、臆病な振る舞い以外の何物でもなかった。
彼等の要求したのは、電子情報の全てと、最先端技術の入手を目的とした、船体の全面公開・査察位で、後は、私物や備品や器具の個人的な交換があったに過ぎない。 研修船は修理・補給の後返還され、乗員達は全て、びた一文奪われず、指先一つ傷付けられる事もないままに、身柄を解放され、中央域への帰還を許された。
しかも護衛付きで。 この当時では、まだ独立と平和に何も疑問を抱いてなかった、シルミウム・パレオス両星系を経て、遭難から三ヶ月後、公社管理下にあるエントレンス175に辿り着き、最末端の赤字路線・星間軌道《スターレイル》80039号へと進入し、彼等は無事、公社派遣の軌道警備隊《レールガード》・巡回船団《PSC》と邂逅した―ただ一人を除いて。 帝国の集団指導体制は、五年間に渡って上手く機能していたが、軍監部は世代交代期に入っていた。
皇帝を求める声はそれとなくではあるにしろ、日増しに強くなって来ていた。
長らく次長職にあって、統合宇宙軍を引っ張っていたスコット=ウォルガードが、人望・経歴・力量共に最も適任と見なされていたが、
『俺は、全軍の顔には向いてない。誰か有望な人物を帝位に就けて、補佐役に回るのが、俺の夢だ』
打診を受ける度に、スコットはそう笑って、かわし続けた。
有望な人物とは一体誰を指しているのか。だったらそいつを大元帥に据えてやろうと、それを聞いた幹部連は、ますます詰め寄った。

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