Jumpin' Five 40

曽根菜由美  2006-12-11投稿
閲覧数[344] 良い投票[0] 悪い投票[0]

11月半ばになろうとする次の練習は、火曜日の、いつもの楽器店3階での練習であった。
 かりあげ君風の進一さんは、今日も来ていた。彼が休むのは見たことない。私よりも出席率は良さそうだ。楽器のセッティングをしながらも、目は自然と進一さんの方へ行ってしまう。まずい、視線だけで、カンのいい人には怪しまれるのだ。
 まだ、このバンドに入って半年と経っていないので、この辺の怖さを知らないのだ。部内恋愛ってありなのか?岩田さんの場合がそうだけど、そうすると、私はここをやめないとならなくなるのか…。
 できれば、このバンドは長く続けたい。
 恋愛と音楽を天秤にかけるという、おっそろしいことを私はしている。でも、両方取りたい、といのが私の本心である。それは欲張りなのだろうか。周りの人からの反応が怖い。やはりそれはできない。
 めまいがする。疲れているせいか、はあと大きなため息をついて、一休みした。今日は打楽器の人間が誰も来ていない。私一人でセッティングをしている。こう一休みもしていられない。早くしないと合奏が始まってしまう。私はそう思って、セッティングの続きを進めた。めまいがひどく、気分が悪い。
 今日は講師の宮川先生がいらしていた。進一さんは、その宮川先生と打ち合わせをしていた。私はティンパニのところへ譜面台を置きに行った。今日来るかわからないティンパニ奏者のために、譜面台を置いている。
「今日、打楽器一人らしいからな…。」
そんな宮川先生の声が聞こえてきた。ヤバイっっ。誰か来いっっ。それに、私は今日も体調が良くないんだっっ。
 原因はわかっている。こればかりは仕方ない。
「曽根さん、一人で大変ですが、頑張ってください。」
宮川先生との打ち合わせを終えた進一さんが、その一言を残した。
「今日、岩田さんとか…来ないんでしょうか?」
「岩田さん、ちょっと所用で来れないそうです。あとの人たちはわかりませんが。曽根さんはいつも前向きにやってくれて、助かってます。」
進一さんは、私の質問にも答えてくれた。それに誉めてもくれた。おだてかもしれないが、素直に嬉しく感じた。
「曽根さん、今日も裏から来てくださいね。」
最後はこの一言だった。聞こえるって。そんな「裏から…」なんて、怪しすぎるっ。
 進一さんは、その辺は照れも隠れもせず、堂々としていた。それがまた良かったりもする。



投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 曽根菜由美 」さんの小説

もっと見る

恋愛の新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ