ボクが、バアちゃんの家の近くで立ち尽くしていると、バアちゃんがボクに気付き手招きした。
ボクは、てくてく歩いてバアちゃんの前に行った。すると、バアちゃんがボクの隣に立っている男のことを、ボクに紹介した。
｢この人が、克が行く学校のクラスの担任の龍島正司先生だよ。克、先生の言うことをよく聞くんだよ。わかったかい？」バアちゃんは、ボクの事情を知っているのに、絶対に特別扱いしなかった。自然に接してくれるから、ボクはそれがうれしかった。
隣の男は、ボクによろしくと、手を差し出した。その手は、全てを包み込むみたいに、大きかった。男は喜びも悲しみも、全てを味わった顔をしていた。
ボクは、男の手をそっと握った。その時、その男は妖しく笑った。バアちゃんからは見えない位置からだったから、その顔を見れたのは、ボクだけだった。その笑みは、子どものころのボクの心をしびれさせるには充分だった。バアちゃんは、この男を信頼しているのだろう。何も知らないバアちゃんは、静かに微笑んでいる。握手を済ませた二人をバアちゃんは家に招き入れた。
バアちゃんの家は、真っ直ぐに伸びる廊下の突き当たりを右に曲がったら客室がある。そこにボクと男は通された。続
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