「神水の鍵を開放しにきた、そこをどいてもらおうか。」
アインは”ギースと名乗った男に言葉を投げた。
「無理なこった。殴り込んできて、そこをどけ?礼儀ってのを知らねーのか?テメェはよ」
『テメェはよ!!』
ギースの回りを飛び回っていた妖精が口調を真似て言った。
ギースは妖精を真似するな、といわんばかりに引っつかんだ。
『やい!離せぇ!こらぁ!セクハラ!変態!スケベ!ちょっときーてんのっ!?』
口々に妖精は喚く。
アインはその漫談を受け流し、剣を握っている指先に力を込める。「どうしてもどかないと言うのなら…あんたを斬り捨てるだけだ!ギース!」
ギースは不敵な笑みを浮かべた。
「上等だ。来いクソガキ!!」
ギースは大剣に手をかけた。
「マナ、退いててくれ。あとは俺に任せ……。マナ?」
アインは横目でマナを見た。
マナは堅く目を閉じ、何かを呟いていた。
アインとギースが話している間、魔法の永昌時間は充分にあった。マナはそれを見逃さず、呪文を永昌した。
「塔の封印の鍵は守護者の命を繋がせることにより効力を保っていると聞きます。」
マナはそう言うとギースの方へと、右手をかざした。
かざした手の平がみるみるうちに紅い光を放ちだす。マナの淡い金髪も少しだけ逆立っていた。
「なら、鍵さえ壊せば守護者も倒せます。」
マナは全身から力を絞り出すように声を発し、魔法の塊を放った。
「はぁっ!!!」
手の平から打ち出された魔法の炎弾はギースの方へと孤を描いて飛んでいった。
打ち出した魔法の衝撃波でマナの髪が後ろに流れる。
ギースに直撃し、爆発音が部屋に鳴り響いた。マナは立て続けに一発、二発と炎弾を放った。
部屋が振動し、遅れて熱風が舞った。が、
「派手にやってくれるねぇ〜」
怒涛の攻撃を受けたはずのギースが悠然と立っていた。
ギースの目の前には水の壁が吹き上がっていた。
バシャ、と音を立て水の壁が飛散する。
「俺は神水の守護者だぜ?炎なんざ喰らうかよ!無駄に砂埃を巻き上げただけ…!?」
ギースはとっさに剣を構えた。
アインが砂埃の中から姿を現し、眼前まで迫っていたからだった。
「油断したな!ギース!」
アインが剣を振り下ろす。
鋼と鋼の衝突音が鳴り、ギースを押し飛ばした。