宇宙戦隊・35

豆宮  2006-12-13投稿
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運転席にテシ、助手席にテチ、後部座席に男、コウ、アンドロイドの順に乗り込み、バトルシップは発進した。
警戒心ゆえか、お互いに何の会話も無い機内。全員が息苦しさを感じてるのは言うまでもない。

コウは沈黙が苦手だった。沈黙が続くとどうしても何か話さなくては、と思ってしまう。

「…申し遅れたな、俺はコウ」
コウは静寂を破り、男に話しかけた。テシとテチは最初動揺していたようだが、順々に口にした。
「…私はテシ」
「僕はテチ!」
三人はこれまでの経緯を男に話した。
「はぁ…大変やったなぁ」
「ところでさ、お兄さんのこと何て呼べばいいの?」
助手席からテチが男の顔を覗き込む。
「う〜ん…名前もなぁんも覚えとらんしな」
「じゃあ僕達が名前つけてあげるよ!ねっ!」
テチがテシとコウに呼び掛けた。
「うへ!ほんならかっこいい名前お願いします〜」
「任せてよ!じゃあ…テピ!」
「ぶはっ」
「コウ!何で笑うの〜!?兄ちゃんは良い名前思いついた?」
「そうだな…火星の偉人、ポヤカニハタ・ハダカニャッペ・タカヌツヒーハルヴォ三世から取って…」
「ださっ!長っ!シンプルに星一徹でいいだろ」
「何だその名前…」
「……知らねぇの?かつて宇宙を救った伝説の戦士の名前だよ」
「何!そのような人物がいたのか…まだまだ勉強不足だな」
「ははっ、バーカバーカ」
「何だとっ!」
「もう〜ケンカ禁止!でも何か良い名前だねホシイッテツ!イッテツで良いんじゃないの?」
テチが提案する。
「確かに強そうでえぇな。俺イッテツでえぇわ」
男は意外にもこの名前が気に入った様子で、イッテツ、イッテツと独り言のように繰り返した。
その様子を見てると、やはりコウにはイッテツが悪者であるようには見えなかった。
「なあ、本当に何も覚えてないのか?」
「うん…目ぇ覚めたらあそこにおって…そのアンドロイドが一緒におって…」
イッテツは視線をアンドロイドに向けた。アンドロイドは壊れているのか或いは電源が入っていないのか、微動だにしない。
「でも調べればきっと何星人かくらい分かるよね!服とか方言とか血でさ」
テチがイッテツを元気づけるように言う。
「早う知りたいわ…自分が何者か分からんちゅうのも気分悪いしな」
イッテツは外を見た。宇宙の闇は自分の脳内を覆う記憶のフィルターのように深く暗く辺りを覆い尽くしていた。

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