リアル

由美子  2006-12-13投稿
閲覧数[617] 良い投票[0] 悪い投票[0]

罪は無くならない。なのになぜ罪の意識は薄れゆくのであろう。二十年も生きてきたら、混沌の現実に翻弄されそんなもの忘れてしまうのであろうか。私はもっと良い人間のはずなのに。
問題の無い人生を送ってきた。両親は健在。共働きで生活に困ったことなんて無い。兄がひとりの二人兄弟。海外旅行経験は三回。至って普通の家庭だ。私自身だって非行に走ることもなく、適度にチヤホヤされながら、適度に放っておかれながら、すくすくと自由に育った。誰でも知ってるであろう大学にも入れた。何も問題は無い。むしろ羨ましがられる様な人生だ。何も問題は無い。はずだ。なのにどうして。どうして私は闇を抱えて生きているのだろう。なぜこんなにも毎日がつまらないのであろう。なぜこんなにも考え込んでしまうのであろう。なぜ自分を愛してあげられないのであろう。なぜ消えたくなってしまうのであろう。
小さかった頃、私は大人になったら悩みなんて無くなると思っていた。本当に思っていた。大人になれば、全ての事が分かるようになるんだから悩みの答えだって分かるはずだ、と。自分だけは汚れるはずがないと思っていた。こんなにも純粋なものが汚されるはずはなかったんだ。

一体いつからだろう。私はいつから汚れたものに浸食されてしまったのであろう。私を戻してくれるものは無いのであろうか。いや、私を引き摺りだしてくれるものは無いのであろうか。こんなに汚れたものが存在してしまっていいのであろうか。

私には、私自身が罪であるとしか思えない。罪以外になんだと言うのであろう。罪は確かに今ここに存在するのに、私は罪を忘れてしまう。たまに、本当にたまに、私は喜びを知る。喜びを知る時、私は罪を忘れてしまうのである。

私は何が正しいのかを知らないのに。私は自分を何者なのかを知ることすら出来ないのに。私は現実になじめないのに。私は何がリアルな物なのかさえ分からないのに。

なのに私はきっとこれからも生きていく。憧れられながら生きていく。全て分かったかの様に生きていく。リアルな物を何一つ掴む事が出来ないままで。

私はこの世に必要なのでしょうか?

i-mobile
i-mobile

投票

良い投票 悪い投票

感想投稿



感想


「 由美子 」さんの小説

もっと見る

ノンジャンルの新着小説

もっと見る

[PR]


▲ページトップ