普通高校、商業高校、農工高校を統廃合して誕生した―というよりは、寧ろ普通高校が総合高校として新生した―県立・青海高校。
博文達が生まれ育った青海市には、公立高校が4校、私立高校が1校点在していた。だが、児童数減少の波には敵わず、修学館以外の高校は生徒数減少の一途を辿っていた。英語科と理数科が併設している修学館に人気が集中し、「取り敢えず大学を目指そう」という生温い(なまぬるい)空気が蔓延していた。「就職したければ商業高校か農工高校」という暗黙の了解が出来上がった所で持ち上がったのが、県の公立高校再編計画だった。これにより、修学館に次ぐ進学校であった青海と青海商業と青海農工の統廃合と、修学館の定時制が分離独立する事が決定した。
そういう経緯によって新生した青海に、名物三人娘と呼ばれる女子生徒がいる。
「サイコとアズは部活が終わったら予備校に行くよね? 修学館のダチに会いたいけど、桜庭のダチとは顔合わせづらいなー」
「あぁ、それ分かるー。サッチも桜庭の子とは付き合いづらいのか」
「でも、アズ。あそこは『恋愛する暇があったら勉強しなさい』って所で昔から有名なのよ。それに、親が勧めたがるケースが多いんだって」
小柄なオカルト少女・黒崎祥恵、長距離走のエース・中道亜鶴、バレー部の8頭身美女・北川彩子の3人は、身長も性格も出身中学もバラバラだが、青海に入学した時たまたま同じクラスだった事がきっかけで意気投合。学年一の優等生・關州和を巻き込み、次第に博文達とつるむようになった。ちなみに、亜鶴は博文・孝政・裕介と同じ中学、祥恵は千聖・佳純と同じ中学である。
頃は夏休み直前。州和の提案により、博文達と合同で勉強会を開く事になった。祥恵が気になる事を口にした。
「關ちゃんの提案通り、みんなの都合に合わせて勉強会をやるのは決まったけど、何処でやるのかまだ話してないよね?」
「くっ。君、今痛い所を突いたね」
祥恵に核心を突かれた州和は、率直に応える。
「はーい! 私、いい所知ってまーす!」
亜鶴が提示した場所に、一同は興味津々だった。