現実と夢の狭間で…本編24

満真  2006-12-14投稿
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妻の『幸江』は、私が寮へと通う事が内心面白くない様だ。口にはしないが、態度に表れている。私は幸江の事など、眼中にはない。弥一が仕入れて来た話を聞きたいが、幸江の機嫌が良くならないままでは寮には通えない。下手をすれば誰かを迎えに寄越すからだ。
幸江と私の子の『慎之介』は道場に通い始め、剣術は上達している様だ。庭で稽古を付けている時があった。私が幼い頃に、父が稽古を付けてくれた。慎之介は私の幼い頃に良く似ていた。

「旦那様、明日は実家に行って参ります。夕餉には戻る所存です」
「そうか、供を連れて行くのであろう?」
「はい、おそのを供に思うております」
「判った」
幸江が明日、家を留守にする…慎之介は塾に行く筈だ…この機会を逃せば、弥一の話は聞く事は出来ぬ。幸江や屋敷の奉公人にも知れてはならない、無論子の慎之介にもだ。明日は勤めは休みだ…幸江が出掛けた後、寮に出向こう。私はそう心の中で呟いた。

翌朝、幸江は共のおそのを供に連れ実家へと出掛けて行った。八十吉は私が何処に出掛けるかは判っている。その事で幸江には告げ口はしないと判る。幸江の言い付けで、寮に居る私を迎えに来た後、屋敷へと戻る最中には色々と話をしてくれた。
母が私に託した文を知らずに、八十吉はた淡々と話をしていた。私の命よりも大事な『さよ』と『ちよ』の事をも話し出し、その後は何も口にはしなくなった。八十吉も何かを知っている様だ…だが、問い質せば断固として口は割らないだろう。それ位に口は堅い男なのだ。

私が出掛けるのを見掛けると、八十吉は懐から文を取り出し私に渡して来た。
「旦那様、この文を弥一さんから預かりました。必ず旦那様以外の者には触れない様にと…」
私は直ぐに文を袖の中に入れ屋敷を出た。そして、人目が無い所で文を読む事にした。



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