伝わらなくていいよ。
気づかなくていいよ。
ただ、時々でいいから、ほんの少し想い出して。
涙に溶けた、あの日の夕日を。
*キャラメル色素*
青く澄んだ空に、膝を抱える。
此処は世界の端っこ。
もう、終わってしまったセカイ。
それなのに、私を乗せてまたぐるぐるとまわる。
未だに止まろうとしないセカイ。
そして、私の思考も。
青空に手を翳した。
てのひらが光に透ける。
こちら側から向こう側へ。
向こうのそのまた向こうの向こう側から、こちら側へ光が通って。
てのひらから映った空には、昼間の淡い光に隠れるようにして、星が白く灯っていた。
「―――」
小さく、ため息のように零れた笑み。
まるで、私みたいだね。
――あの日、確かに、私は終わったんだ。
繋いでいた指先がほどけて。
あ、と。
声を上げることもなく、軽く宙に浮いた。
落ちてきた時には、もう。
散らばる血と一緒に私の呼吸も散花した。
いつのまにか、
身体を抜けて、私は空に近かった。
「あーあ。」
また、ため息。
手を伸ばす。
届かない。
届かない。
この空の青さに溶け込めても、星には触れられない。
そこに在るのに、触れられない。
私は誰にも触れられない。
だって。
だって。
――ことりと、足跡が鳴る。
見上げた先。
空に話しかける貴方の後ろ姿。
「――なぁ、どこにいるんだよ」
(此処にいるよ。)
「独りってさ、案外キツイんだけど」
(そうだね。)
(ひとりぼっちは寂しいね。)
「なんで…、」
(嗚呼、)
それ以上先は、言わないで。
「――なんで、ひとりで逝っちゃったんだよ……っ」
真昼の白いヒカリが目に沁みた。
ねぇ。泣かないで。
私、ずっと傍にいるから。
此処にいるから。
忘れないでほしいの。
私の体温。
千年の夜を越えて、二人であの星になれたらいいのに。