容莉子の突然の告白に私は動揺した。
「フラれてもいいんだ。気持ち伝えたい。卒業したら会えなくなるもん。」容莉子は笑顔で言った。私にとっても容莉子にとっても彼は部活の仲良しの後輩なのに、容莉子はいつの間に好きになったんだろうか?
夕日が差し始めた中庭に彼のトランペットの音が響く。練習に戻ろうとフルートを持ち直す容莉子に、私は何を言ってるんだろう。
「私もノムラが好きなの。」
馬鹿なことをしたと思う。
男子テニス部がまだ練習をしているのに、私と容莉子は楽器を片付けて何も知らないノムラを待った。どっちが選ばれても3人でまた仲良くしようねって言った容莉子。私は残酷にも心の中であざ笑う。「容莉子、あんたが選ばれるとでも思ってるの?」
男子テニス部の中原が友達を介して私に好きだと告げた時、ノムラは私と一緒にいた。容莉子の気持ちを知ってた私はノムラの前で言ったんだ。
「ごめん。好きな人がいるから。」
あの時ノムラは何を思ったんだろう。
男子テニス部が片付けを始めた頃、容莉子は戻ってきて告げた。
「フラれちゃった。でも、ノムラ、眞美と付き合いたいって。」
容莉子は動揺していた。私はなんの感情も抱かなかった。当然の結果だった。
その日の帰り道、私は中原と手をつないで帰っていた。
「好きな人がいるって言ってたのはなんだったん?」中原は聞いて来た。「あれね、だって恥ずかしいじゃん。ノムラ君がいたでしょ。あんた友達じゃん。」
「あぁ、一緒にいたね。オレ、フラれたと思った〜でも嬉しいわ。ノムラ、岡田さんに告白されたらしいね。」
「容莉子?うん。フラれたっぽいよ。」
「知ってる。ノムラに聞いた。」
中原はそれ以上は何も言わなかった。
後輩のノムラをとられたくなかった。容莉子が万一にもノムラと付き合ったら、3人仲良くなんて無理だった。
だから私は邪魔したんだ。ノムラの態度で、彼が容莉子より私を好いているのを私は知ってたけど、知らないふりしてた。3人の関係が壊れるのは嫌だったから。
ノムラの返事に私は答えた。
「ノムラのこと好きだけど、私もうすぐ卒業だし、付き合いたいとかじゃないんだ。気持ち伝えたかっただけ。」
次の日には中原と私が付き合い始めたのをみんな知ってた。口の軽い中原。ノムラにも言ったんだろう。きっと容莉子も知ってる。
容莉子とノムラはどう思っただろうか。
私は知らない。