コンビニで花火を選ぶとき俺と田村が少し言い争うのを見て沢口が子供みたいと笑った。
海に着いた時、浜辺にはこの時期には珍しく全く人がいなかった。
「良かった。カップルとかうぜぇもん。」
田村が毒を吐いた
「心狭いな。」
「タク火つけて〜。」「心の広いタクくん、お願〜い。」
「きしょい。」
女の口真似をして甘える田村に悪態をつく。
「あ!今何か跳ねたよ!見た?」
そう言うと沢口は海の方に走って行った。
「クソかわいいな。」田村がぽつりと呟く。
「…アイツ深く接すると意外とかわいいよな。ぱっと見きれい系だけど。」
田村の言葉を適当に流す。
諦めたんだろ。
そんなこと言うなよ。
俺はもう3人の関係が壊れるのを怖いと感じるようになっていて田村が彼女に気持ちを傾けるのが許せなかった。
沢口を好きな気持ちももう隠してしまおうかと思った。
3人なら友達でも幸せになれそうやし。
この考えが逃げであることはわかっていたけれど。
「あ、アイツこけたで。」
「え?」
「ほら。」
田村が指差す方向を見ると沢口が海の浅いところで呆然と座り込んでいた。
「ちょ…お前何傍観しとんねん!」
沢口に駆け寄ると
「ダグ〜。」
泣きそうな彼女を見て何だか笑ってしまった。
「お〜アホがいる。」
「アホ言わんといて!」
「まあまあ…。俺ジャージ持っとんで着なよ。ほらタオルも。」
「タクありがと。」
俺のジャージは沢口にはぶかぶかだった。
そのあと普通に花火を楽しんだ。
田村がねずみ花火から逃げてこけた。
ヘビ花火が沢口のツボな入って笑い続けた。
色とりどりの花火に目がチカチカした。
田村が片手に4本の花火を持って全部に火をつけた。
負けじと両手でやろうとする沢口を俺が止めた。
ロケット花火を遠くまで投げる競争をした。
田村が煙をわざわざ俺たちの方に向けるからより風上の位置の奪い合いになった。
打ち上げ花火が思いのほかきれいだった。
残るは束になった線香花火だけだった。