「あと線香花火だけか〜…。」
沢口がつまらなそうに言った。
「まぁまぁ。定番やけど誰が最後まで落ちやんか競争しよか。」
「それ強いよ、俺。」
田村が根拠のない自慢をする。
3人で一斉に火を着ける。
自信があると偉そうに言った田村の火が1番に落ちた。
それを馬鹿にした瞬間沢口の火が落ちた。
俺の火は2人より随分長く燃えた後火薬が燃え尽きて紙の部分まで燃えて来たので慌てて手を放した。
「えっ、凄い!全部燃えたよ!?」
「くそ!もう1回!」
田村がムキになる。
しかし何度やっても結果は同じ。
田村が一番に落ち
後を追うように沢口のが落ち
俺が一番最後まで残る。
今思えば
あの線香花火は3人の未来を予兆しているみたいだったね。
あの夜はホントに楽しくて
これから何が起こるかなんてわからなかったし
その時のそれぞれの暗く苦しい思いを忘れられた。
でも3人がそんな風に過ごせた時期はほんのわずかだったね。
短い夜の短い夢みたいだったよ。
醒めてしまえばもう戻らない。
そしてだんだん忘れゆく。