【天帝の館にて】
「チッ…。失敗したか。まぁいい。アレは所詮、捨駒に過ぎない。しかし…あの冷たい肌に、今度こそ傷をつけてやりたかったのだが…フン、小憎らしい氷の巫女め…。」
千里眼で一部始終を見ていた炎陽の天帝は、美しい顔に冷酷な笑みを浮かべてそう呟くと、「火燐(かりん)…今度はお前の番だ。巫女に必ずや手傷を負わせて来い。…行け。」と暗闇に向けて話し掛けた。
すると暗闇で微かに何かが動く気配があり、次いで「…御意。」と低く抑えた声が聴こえた。
天帝は満足そうに頷くと、徐に立ち上がって、燃え盛る炎で出来た扉を開き、その中へと消えて行ったのだった…。