俺はいつきの言うように、九時にのんびり起きて、身支度をすると、コンクールの会場のホテルに向かった。
ざわめくコンクール会場をのぞくと、先に出たはずのいつきの姿はなく、端から端まで俺は探してみた。
やはりいないのだ。
すると、同じようにきょろきょろ探す親方の進藤の姿が見えた。
「敦、いつきはどうしたんだ?もうすぐ始まるというのに、いないんだー」
「おかしいなー俺よりも一時間先に出たはずなのに・・・」
「まさか、逃げ出したんじゃないよなー」
親方は心配そうに眉をひそめた。
「それはないですよ、だって夕べは遅くまで店で試作品を作ってましたからねー」
なんだか言い知れぬ不安が、胸をよぎり、店の仲間にも電話してみるが、誰もいつきの居場所は知らなかった。
「あいつ、どこ行ったんだ・・・」
俺は焦りと不安でいっぱいだった。