バスタブに溜った湯をぬいた。あかい、あかい液体が小さな穴へ吸い込まれていく。
耐えきれなかった。こんなにも弱かった。
一番予想外なのは自分。
目の前で動かなくなった貴方が、愛しくて――いや、生きるため必要で。
いつか二人で泡をたてて入った白いバスタブ。
強く握り締めた工作用カッターについたどす黒い物。
貴方の青い唇。
ただ淀んだ鈍色の瞳。
ああ、笑える。
貴方から漂う腐臭すら。
いつから狂ったのか、などと考えるだけ無駄だ。全ては始めから狂っているものだから。
ねえ貴方。
大好き、だから
一緒にいこう。
ぐちゃり。