『…で、こちらが記憶喪失のイッテツさんってわけね』
メリードに着くとすぐにあのアンドロイドはポプリによって実験室へ運ばれ、イッテツは三人と共に休憩室に移され、サリの尋問を受けることになった。
いつもサリの肩で呑気に舌をチロチロ出しているリーサは何故か酷く怯えた様子で、サリの髪の中に隠れていた。
「サリ…何か分からねぇの?一応神だろ?」
『神だからって何でも知ってるわけじゃないよ…地球人って何でそんなに神に頼るのかな。まぁ結論から言ってこの人の正体を探るのは難しいよ。この方言は宇宙の至る所で使われてるし、その方言を話すからといってその土地の出身とも限らない…服は色んな星の物が組み合わされてるし、それと…見てご覧』
サリはイッテツの目を指差した。
『彼の瞳の形。十ニ角形でしょ?これは十ニ個の星の血が混ざってる事を示すんだ』
「つまり何星人か特定できないって事か…」
全員が溜め息をつく。
「しかし…おかしくはないか?」
テシが腕を組む。
「全く手がかりが無いなんて…完璧すぎると思う。まるで故意にそうしたような…」
「…何や、俺に文句あるんかい」
イッテツがテシを睨みつけた。
「別に。意見を言ってみただけだ」
「…俺がわざと十ニの星の混血に生まれてきたとでも言いたいんかい」
「それは無理だろう…しかし、特定できないという事はスパイとして行動するにはにはもってこいだな」
辺りに重い空気が流れた。
「手がかりならこれから見つけていけば良いよ!ねっ」
テチがテシとイッテツをなだめる。
『そうだね…それに、どの星の血が混ざってるかは詳しく調査すれば分かるかも。他星間同士の遺伝子組み換えは複雑だから調査に時間かかるけど…』
「なら早く調査してくれや!こんな野郎に疑われっぱなしじゃかなわんっちゅーねん!」
再びテシを睨みつけてイッテツが訴える。
『了解。じゃあまず別室で血の採取を…』
「うえっっ?!」
突如イッテツの顔色が変わった。
「どうしたんだよイッテツ?」
「ち…注射は嫌や…!」
さっきまでの勢いはどこへやら。イッテツは両腕を抱えて縮こまってしまった。
「でもそれじゃ何の解決にもならないよ!」
「そーだぞ!この弱虫!芋虫!毛虫!えーっと、あと何かの虫!」
「じゃかぁしいっ!」
低レベルな言い争いにテシもサリも呆れて物も言えなかった。
その時、実験室から悲鳴が聞こえた。