「死んでいる？本当に・・・？」
部屋で横たわる私が耳にした彼女の死。いざ彼女の元へ行ってみたら、見つめられると恥ずかしくなるぐらいの大きな大きな眼は、静かに閉じていた。
何も変わらないじゃないか。彼女はただ眠っているだけなんだろう。何も変わらない眠っている時の彼女と、なんら違いがないのだ。
僕は起こさないように、そっと彼女の頬に手を伸ばした。指の先端より電気が走る様に寒気を感じた。
「冷たい。」
何これ？僕の中に小さく佇んでいた、「死」という言葉が恐怖心と共に膨れ上がった。
彼女を僕は何よりも大切にして自分を投げ打ってでも守ると思っていたのは、勝手なる僕の妄想であり単なる頭の中で思っていた事だったのだ。だって彼女は死んでしまったのだから。陰なる様々な感情が僕の目から涙をあふれ出した。
部屋の片隅には散り果てた椿の存在が皆無になっている。彼女を守る、命を投げ打ってでも、そんな僕の幼稚な愛は、二人が生きているという、愛にとって一番幸せな事を忘れていたのだ。二人の幸せは椿と共に舞い散ってしまのだ。
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