帰りは、やはり裏から進一さんと一緒に帰った。
「アンコン、困ったね、それじゃあ。」
「メンバーが足りないっていうのが、一番のガンなんです。そのせいで、練習もとどこおってしまっているし…。ちょっと出れるかどうか…。」
「楽器運びがあるしね。あ、僕、当日、車出すから。」
「え?そんな、関係ないパートなのに…。いいですよぉ。」
「関係なくないつもりだけど…。」
そうか、と思った。私と関係あるのだ。この私と。
私と進一さんとのつきあいは不思議であった。ふつうなら、2人であちこち遊びまくるとか、毎日会うとか、ホテル行っちゃうとか(おっと…)、そういう男女交際がありがちだが、私の場合は違うのだ。おそらく進一さんとだから、こんなつきあいができるのかも…。こんなところで白状してしまうが、私が今までつきあってきた人々とは、やはり今言ったような、ありがちなつきあいをしてきた。
ところが、進一さんとは、会うと遊びに行くとかっていうのではなく、いろいろと音楽と人生を語るのだ。そして愛も語るのだ。ハッキリ言って、話していることの方が多い。どこかへ行くっていう訳ではない。車の中で、あるいはどこかに車を止めて、二人で語るだけなのだ。
そう言うけど、今にいろいろするのよ、と思っている人も多いだろう。ま、そうも思うけど、会う機会自体が少ないのだ。ご覧のとおり、練習は週1回強ってところなので、それに合わせて、我々もそういうペースでしか会わない。お互い社会人だし、時間もないせいもあるけど、そういうところで束縛したりしないのだ。秘密の交際だから、かもしれない。でも、進一さんの愛は、すごく深く感じることがある。
いづれにしても、幸せ者の惚気話だな。この辺にしておこう。
結局、アンコンの楽器運びのことは、進一さんにお願いしてしまった。自分も、私のステージを見たいらしく、そのついでもある、と言っていた。
今日も、進一さんの車で、自宅まで送ってもらった。その途中の会話がはずむ、いつものデートであった。