”守護者の命、絶たれる時、封印の鍵も又、絶つ”
ギースがまだ、神水の守護者に任命されたばかりの頃、
封印騎士団”団長ｼﾞｰｸにそう告げられた。
生きる上での重荷でしかない【封印の鍵】との命を繋がせる契約に、ｳﾝﾃﾞｨｰﾈは反対したが、ｷﾞｰｽは耳を貸さなかった。
なぜなら、ｷﾞｰｽがｼﾞｰｸの出した一つの条件に魅入られたからだった。
それは【殺戮】の正当化。
鍵の封印を解かんとする者達へと向けられたものだった。
ｷﾞｰｽは神水の塔に解かんと、する帝国軍が侵略してくる度、彼らを血祭りに上げた。
敵とは無縁の人々でさえも反逆の意思さえ見つければ一人残らず抹殺した。
守護者という地位。そして魔物との契約による達しすぎた力を利用し、ｷﾞｰｽは殺戮を繰り返したのである。
自分は塔の守護者。世界崩壊を防ぐための五つの封印の一つ。
そして、今、人の限界を超えたはずの自分がたった二人の若者に討ち倒された。
「ふっ…結局…俺は強者になれなかったのだな…」
ｷﾞｰｽはそう言うと、固く瞳を閉じ、
そして、動かなくなった。契約相手の妖精も力尽き途絶えていた。
「…勝った…勝ったんだ！」
ｱｲﾝは剣を支えにしてうまく働かない体を起こした。
「ｱｲﾝっ！！」
ﾏﾅは駆け寄り肩を貸した。
「ﾏﾅ、神水の鍵は解かれたよ」
ﾏﾅはｱｲﾝを見つめ、微笑んだ。
「ぇえ。あなたの力によって…。これで村は救われます」
ｱｲﾝが何かを言いかけようとした瞬間、
酷く足元が揺らいだ。
「鍵を解放したことによって、この建物の崩壊が始まったようです…急いで脱出しましょう！」
ﾏﾅが冷静に言う。
ｱｲﾝは頷くとまっすぐに窓のほうへと向かった。
「レグナーーーッッ！！」
レグナがゆっくり降下してくる。
「塔が崩れかけてるようだな…背に乗れ小僧ども」
二人は竜の背に乗り、神水の塔を後にした。
はるか上空からｱｲﾝは崩れ落ちてゆく塔の最期を見届けた。
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