食事も食べないで部屋に行き、着ていた服を脱ぎ部屋着に着替える…チェストの上には涼のはにかんだ写真が写真立てに入っている。涙が自然に溢れて頬を幾つも伝った。心が彼を求めて泣いている…凄く辛くて、出会った事を全て忘れたいと思った。
「涼…どうしてなの?私は…都合のいい女だっただけ?」
写真に向かって呟く。だけど、写真の彼は答えてくれない。自分で彼に別れを告げたけど、それが正しいか正しくないかは判らなくなっている。
急に占いのお婆さんから貰ったお守りを思い出し、鞄の中から取り出した。掌に転がして見詰めた…不思議と落ち着き、涙が止まった。このお守りは何だか、彼の様な気がしてならない…赤い組紐が凄く綺麗で、運命の赤い糸の感じがしてんらなかった。
時計を見るともう、夜の10時を回っていた…明日、田中さんと会う約束をしている。この事を茜が知ったら、田中さんに会う事を猛反対で怒ると思った。部屋の電気を暗くしてベッドに入った。
私の掌にはお守りがある…お守りを持ったまま眠りに就いた…。