なりたかった。生き物ではない生き物に。
生きているのは恐かった。
変わっていくのが嫌だった。
だから
「僕になりたいんですか?」
男は言った。私は頷いた。
天使でも悪魔でも神でも霊でもない男。
いや、男でもない物。
私のような死者を標す物。
「僕は、罪人なんです」
顔を上げると、何の感情もない―いや。全ての感情が混ざったような、穏やかな笑顔があった。
「一番やってはいけないことをしたから、この仕事、いえ、この生き物になりました」
やってはいけないこと?
中傷?強盗?自殺?殺人?戦争?
「いえ」
じゃあ、何?
―僕が犯した罪は大きすぎて、全ての物がなくなりました。
僕を裁いてくれる人もいなくなってしまったから、僕は僕を裁くことにしました。
海を、陸を、森を作り、小さな生き物を作りました。それはどんどん成長して変わっていきます。森も拓かれ、街もできました。
でも、僕は変われません。
変われない、そのことが
「あなたの罪と罰なのね」
頷いて、男は乾いた笑い声を出し
「もし神様がいたら、それが何より可哀想な存在だと思いませんか?」
肯くことも、否すことも、出来なかった。