「もしこれが、魔法使いにチョコレートに変えられた王子様だったら?…あんたバカ?食べるに決まってんでしょ」
千代子(ちよこ)はひょいっとチョコを口に入れた。
「あ!最後の一個が!!テメッ、ぜってぇ女じゃねぇ!!」
「なんでよっ?コレは、渋吾(じゅうご)のじゃなくてあたしのなのっ」
「可愛げねぇヤツ〜。砂由(さゆ)ちゃんは、王子様なんだったら食べれないねってチョコくれたぞ」
なっ…、それを言っちゃうかァ!?
砂由というのは、お人形さんのように可愛いあたしの親友。いい子だからチョコをくれたのも頷ける。でも、それをあたしと比べるのはどうかと思うけど!?
「わぁん砂由ぅ〜〜っ!!」
「よしよし、ゴメンねあたしが悪かったよねぇー」
「砂由は悪くないんですうぅーっ!悪いのは渋吾だもんっ」
「悪いのは誰だって?」
いつのまにか後ろに立っている渋吾に驚いて、千代子はうまく言葉が出なくなってしまった。
「悪いのは渋吾くんです」
砂由が手を挙げる。
「早く言わないのが悪いんでしょう?」 渋吾はヴヴ〜と唸って、千代子を睨んだ。
「俺、無類のチョコ好きで有名なんだけど。知らなかった?」
「チョコ?」
「違う。チヨコ。チーヨーコ」
「うっそでしょ…」
「ホントだって!信じてねぇな?やっぱ俺よりチョコのが大事なんだー!」